Story

Hidden Story

001

くりむかるむくりむかむ~は秘密の呪文。

"crime・calme"はフランス語で"罪・穏やか"という意味。

"="は"ふたつで一つの名前"を意味します。

罪は穏やかに広がり、穏やかな罪は深く根を張る。

わたしたちは罪を犯します。

名作といわれるものたちをリデザインする罪を。

こころの底から愛する名作たちをこの手にかけていきます。

それはとっても甘~い魅惑の味わい。

好きで好きでたまらない、だからついつい手が伸びちゃう。

小さなわがまま、ちょっとした贅沢。

クリム=カルムの名前にはそんな気持ちが込められているの。


péché=mignon・Delacroix


002

地下鉄の揺れに身体を任せて目を閉じると、地の底に魂が引きずられていくように感じた。

終電が過ぎた新宿の街をあてもなく彷徨い歩く・・・。

一つの作品を創る、それには沢山の時間がかかる。本当に沢山の時間が。

突然の閃きだったりオーダーだったり、きっかけは様々だが戯曲を書き上げるのが私の役割だ。

調べたり考えたりにもそれなりに労力がいるがそんなのは気にならない。

むしろ今まで知り得なかった情報や発想に出逢うことが楽しくてたまらない。

出来上がった戯曲は私の頭のなかで完璧に完成していて、自信を持って演出家へと渡す。

何度かの打ち合わせをしてから、俳優、照明、音響、美術、制作、舞台監督と各スタッフとも議論を交わす。

するとどうだ、今まで世紀の傑作だとまで思っていた私の戯曲が、とても不完全で歪な、虫に食われて腐りかけた林檎のように思えてくる。自信は一気に打ち砕かれる。

だがなおも議論は続けねばならない・・・。

私の生み出したこの戯曲の権威を守るために、ではなく私個人では到達できなかった可能性を目撃するために。

そう、だからこそ多くの人間が集う舞台芸術というものが好きだ。

人間は思考し感じる生き物だ。そして新しい考え方を獲得してはその器を拡張していく。

一人の人間の出来ることは限られているが、人と人が出逢うことで無限の可能性が生まれてくる。

この世界に感謝する瞬間だ。

演劇は世界を救うのかもしれないと本気で思えてさえくる。

ああ、理想はどこまでも気高い。


それらを成し得るにはやはり俳優の力が必要だ。

演劇は観客の前で俳優が表象し再現することで作品の大部分が成り立つ。

俳優にはそれを受け持つ義務と、期待に応える責任がある。プレッシャーも相当なものだろう。

無責任な言い方かもしれないが、幕が開いてしまえば我々に出来ることは何もない。

しかし現代の演劇シーンでは舞台俳優にならないという選択肢も選べる。

専門的な技術や知識がなくても舞台に立てる。

それはどっちが良いとかいう問題ではなく、単に多彩に枝分かれしてきたというだけなのだけれど、

ああ、出来ない理由も無限大なんだなと思い至るのだった。

趣味とか相性の問題といってしまえばそうかもしれないが、なんともスッキリしない。


気がつくと見知らぬ重たい扉を押していた。落ち着いた雰囲気のバー――酒を飲まない私には縁遠い場所だった。

運命の波に流されるようにカウンターに座る。ふと隣を向くと、年齢も国籍さえ曖昧な不可思議な魅力を纏う美しい女性と目があった。――ペシェだった。

話を聞くだけ聞いて彼女はこう言った。

「わたしがやるから、あなたが書きなさい」

唐突だな、と私が応えると「人生ってそういうものじゃない?」と言う。

シンプルで強烈な言葉だった。

西荻小虎


003
条件があります。
稽古前に上演台本を用意すること、俳優に全日程稽古参加させること。

まずはそれを。

舞台芸術を創作するために各セクションに分れ作業を進めつつ、役割を越えて協力し合う必要があります。

それが出来る方々とだけやっていきたい。

……。

………。
それはずいぶんとわがままな注文だったかもしれません。そして現実は理想通りには行かないものです。
それでも「ロミオとジュリエット=断罪」「椿姫=原罪」と続けて創りあげられたのはその«人»の力に他ならない。
…。

左手に原作のタイトルを、右手に私たちが選択したモチーフを持ち、この新宿でアートを創っていきます。

アートは生きる知恵、命の源のようなもの。
過去に先人たちが撒いた種、熟れた果実を私たちはいただく。

その罪の味、それがクリム=カルムなんだと、私は思うのです。

sola